インタビュー:2007年12月21日
はじめに
近年の科学技術の進歩はめまぐるしい。
そのおかげで、人類は「便利」という素晴らしい価値を手に入れてきた。
その一方で失いつつあるものがある。
それは「関心と疑問」だ。
食品にしろ家電製品にしろ人工的に創られたものを「うまく利用する」
そんなスキルを人類は磨き続けている。
しかし、その代償は大きい。
人類は「無関心」に順応しつつあるのだ・・・
関心と疑問を持たない人類は、どこへ向かうのか?
特に、子どもへの影響は計り知れない・・・
そんな疑問に警笛を鳴らす団体がある。
それがNPO法人 市民科学研究室(市民研)だ。
今回は、代表の上田 昌文氏に最新の取り組みについてお話を伺った。
インタビュー・文=後藤 広明(社会貢献プランナー)
NPO法人 市民科学研究室とは
(c)市民研市民科学研究室は、専門的で素人には手の届かないのものになりがちな「科学技術」を
市民の立場からとらえ直し、市民が自分の生活をよりよくするために活用するという
「市民科学」の活動を 提唱しているNPO法人である。
その1つの取り組みが「子ども料理科学教室」である。
子どもに身近な「料理」という切り口で、
科学に触れるきっかけを提供し続けている。
その想いは、単に科学に触れるきっかけを与えるだけでなく、
「科学の理屈を応用し、自分で問題解決できる人を育てること」を見据えている。
子ども料理科学教室のきっかけ 〜無知×リスク〜
5年位前から、科学技術に関する情報発信活動を行ってきました。
例えば、携帯電話の電磁波の影響や環境ホルモンなど、
5〜6名でチームを組み、取材、文献調査、計測などの結果を
毎月講座で発表するというような活動です。
生命操作技術、ナノテクノロジー、放射線被曝などをテーマにしたチームに加えて、
2003年に「食べ物」にフォーカスしたチームを作りました。
雑穀レシピで有名な大谷ゆみこさんとの出会いが大きなきっかけです。
色々と調べていると、戦後、日本の食生活はこれまでの歴史上、
最も劇的な変化を迎えていることがわかりました。
例えば油の摂取量。戦前の2〜3倍もの量を摂取していることがわかりました。
しかし、そんな事実を知っている人はごく一部です。
そもそも食べるという行為は「他の命を手に入れて、自分達の命を維持する」ということです。
しかし、今や食べ物の大半は、すでに加工されてスーパーで買うものとなっています。
誰がどこでどんなふうにしてそれを作り、どうやって私たちの手に届くのか、
そうした一連の流の中でどんな問題が引き起こされているのか。
それらを私たちが意識することはほとんどないと言えます。
特に子ども達にとっては、それらを知る機会は非常に少なく、
「知らないことが自然」な状態になりつつあるのです・・・
「子ども達が失いつつあるものがある・・・」
そんな想いで始まったのが「子ども料理科学教室」です。
子ども料理科学教室が実現したいこと 〜科学×応用〜
「子ども料理科学教室」では、子ども達がシンプルで美味しいものを作ることを通じて、
科学の目を養っています。
例えば、砂糖を使わないクッキー作りのプログラムがあります。
これは、野菜本来の甘みでクッキーを作ろうという試みです。
野菜は生のままでは甘みは少ないですが、加熱することによって甘みが増します。
この特徴を実験を通じて理解し、クッキー作りを通して体感することで、
自然科学に対する興味を引き出しています。
身の回りのことに関心と疑問を持ち、調査や実験を通じて理解する。
そんな科学の理屈が分かれば、いろんなことに応用が利くのです。
「自分で問題解決できる人」、そんな人に育って欲しいですね。
子ども料理科学教室のこれまでの活動 〜子×親〜
これまでに5つのプログラムを開発し、延べ300名の人たちに提供していきました。
子ども料理科学教室は、親子で参加してもらうのですが、
子ども達の関心の高さもさることながら、親の関心も高いのが特徴です。
親は子どもが作った料理を一緒に食べるのですが、
親子が和んでいる様子がなんとも言えません・・・
また、家でもできるプログラムを心かけていますので、
帰ってからも楽しめるというおまけつきです。
今後の抱負 〜課題×工夫〜
まず、1年間で和食の基本となる要素を網羅した10個のプログラムを提供できるように、
これまでに開発した5つのプログラムに加えて、
さらに5つを今後開発していきたいと思っています。
そのためにはスタップの人数も増やす必要があり、
食育や食の科学に深い興味のある人をぜひ雇いたいです。
また、“和食の基本”と言いましたが、とても幸いなことに、
日本の伝統的な調理の技を今に伝える素晴らしい仕事をしている方々が
各地に沢山いらっしゃるので、そうした方々の姿を
子どもたちにを伝えていくこともしっかりとやっていきたいですね。
それから、昨今、子どもの理科離れが話題になっていますが、
「子ども料理科学教室」を通じて言えることは、
子どもたちの知的好奇心や生活力が低下したということでは決してない、
ということです。
“(出来合いの知識を)教える”のではなく、
生活の中の事象を科学の目でみつめるという体験の“きっかけを与える”ことで、
子どもたちが例外なく溌剌とした探求心を発揮するようになる姿は、じつに印象的です。
「子ども料理科学教室」を1つの事例として、大人たちの発想を変えていきたいですね!
問い合わせ先
団体名 |
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取り組み詳細 |
子ども料理科学教室 紹介VTR
編集後記 〜webmasterのつぶやき〜
「「子ども」と「料理」と「科学」の異色のコラボレーション。
名前を聞いただけでも、その奥深さが感じられたが、
今回の取材を通して、その真意に触れることができた。
「科学の理屈がわかれば応用が利く」「自分で問題解決できる人に」
「子どもが変わったわけではない」
そんな言葉が印象的でした。
上田さん、これからも素敵なプログラムを楽しみにしています!

saveproject代表
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